ANOTHER BRICK IN THE WALL

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「ボラバイト」から「奉仕活動の義務化」へ

「苦労」語れなくて、若者のノンプア・コンプレックスの壁(AERA:2005年12月19日号)という記事が一部で反響を呼んでいる。
内容といえば、中年オヤジは浪花節的な話が好きでそのような「ネタ」を持っていないと「苦労」するという何とも馬鹿げた話だ。

これが厄介な話で、「中高一貫の私立校から私大へ。1年間、アメリカ留学」という「スマートな」苦労ではダメ、いじめ、うつ病などといった「生きづらさ」的苦労では人前でい言えなくてダメ、「ネタ」のため交通費を自分で負担して、北海道の酪農家などに農業支援に行ったりする「ボラバイト」といった苦労「ネタ」を買って手にしなければならないというのである。
さらに厄介なのが
時代が求めるのは「克服できる苦労」なのか。そこには階層化が見え隠れすると指摘する声もある。放送大学の宮本みち子教授は言う。

 「豊かな社会になった現代では、大人が責任を持って、苦労を与えない限り、苦労を味わうことはできない」

 宮本さんが言う「与える苦労」とは、親元からわざと離す、地域社会活動に参加させる、などだ。

 「でも、そうした経験ができるのは、社会に関心があり、教育にも熱心な両親を持ち、金銭的にも余裕のある家が多い。そんな階層の固定化まで起きているんです」

階層化の話まで及ぶのである。

この話、単に階層化の話で留まらない怖さがある。何が怖いのかと言えば、ボラバイトできるような余裕のない者はどうするのだという話になった場合に、不公平がないよう、みんな「平等」に「苦労」させればいいじゃないかということになることである。つまりは、「奉仕活動の義務化」へなし崩し的に進むことである。
最近、はやりの中学で行われている職場体験についても「奉仕活動の義務化」につながるものであるという批判があるが、「コミュニケーション能力」の学習のためとか「職業意識」の高めるとめとか口実をつけて本当に導入されかねない危険性がある。

それにしてもまったく批判精神のない記事だ。こんな「浪花節」で人を評価してよいのか、もっと客観的に評価するべきでないかとか問題提起できないのであろうか。中年オヤジに振り回される若者が哀れではないか。
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by coma79 | 2006-01-30 20:26

治安「悪化」と「格差」社会

*文中敬称略
大竹文雄(経済学)のプログに少し気になった記事があった。

2006年1月 5日文の記事において、芹澤一也「「子供を守れ」という快楽-不安にとりつかれた社会で」(論座2月号)について言及している。その部分を引用しておく。

一つは、芹澤一也氏の
「「子供を守れ」という快楽-不安にとりつかれた社会で」
です。

統計的には、殺害される小学生の数が
増えているわけでもないのに、不安だけが
増していることを、治安管理そのものが
快楽ではないか、という視点で分析しています。
 私の専門の所得格差の話となんとなく
似ています。


ここで示されている芹澤の論文も大竹の格差に関する著作も読んだことがないうえで、一般論として語るが、治安・安全崩壊と格差の広がりがともに専門家の通説として否定されていても、政策面においては正反対に取り扱われている。

先に格差拡大について言えば、政府は格差拡大は認められないとし、小さな政府を目指す中で、「聖域なき改革」のスローガンのもと、福祉も「改革」の対象となり縮小される方向にある。

他方、治安悪化については、専門家から治安悪化は数値上のトリックであるとの指摘があるにもかかわらず、政府は治安悪化・崩壊は自明のものとし、治安分野は「聖域」扱いで刑罰・取締りの強化の予算が組まれている。

とりあえず、この差は指摘しておきたい。
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by coma79 | 2006-01-23 22:50

お国のために働け

ジョブカフェ・サポートセンター(経済産業省 事業)のメールマガジンを登録するのはただと思って、試しに登録していたのだが、今回来たメルマガには驚かされた。

メルマガの最初のあいさつ文を引用してみよう。

強調部筆者


◆ メルマガ「ジョブカフェ・クエスト」 第27弾 1月11日号(新年号) vol.49 ◆

 
 今日は、1月11日イチ並びですね。1月11日と言えば、鏡開き。お正月に床の間や神棚に飾られていた鏡餅を砕いて、そのお餅をお雑煮やお汁粉にして食べ、一家の円満を願う行事です。今年は一家の円満のほかにジョブカフェの更なる発展を願いつつ鏡開きを行ないたいものです。(鏡開きは地域によって多少異なります)

 1938年1月11日には戦局拡大で国民の体力向上を図る為に、内務省から分離独立する形で厚生省(現在の厚生労働省)が発足しました。その厚生労働省は、今夏にニート対策として、全国25箇所に若者の職業的自立を支援するためのネットワークの拠点「地域若者サポートステーション」(仮名)を設置する予定です。
若者の就業対策は、国の大きな課題の一つですね
(以下略)


何がすごいのか。見ればわかるように、戦時中の国家総動員体制のそれと若者の自立支援事業とが同列にされているもである。「戦局拡大で国民の体力向上を図る為」とあるが、これは単に国民が健康的に生活することを推進するのではなく、お国尽くすために強くあれということである。これと若者の自立事業を同列にするということは、ニートと言われる人がその人個人にとって人生をムダにしているからということでなく、お国にとって損害であり、お国のために「戦える」に人間にしようとしていると言ってるようなものである。

改めて、やっぱりそうかと思わせるメルマガである。
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by coma79 | 2006-01-21 20:02

「日本人は『貧乏なふりしてうまく金をもらっている人間は許せない』」

Demilog@はてな demianさん)より
[医療・健康]そんなにしばかないで~(泣)]
このエントリーに挙げられている「シバキ主義者」の数々の発言を読んで思い出しだのが(demianさんはシバキ主義じゃありません、誤解がないように)、橘木俊詔編著「封印される不平等」(東洋経済新報社)における、タイトルにもある佐藤俊樹の発言だ。
本書前半部における、橘木、佐藤、あと、苅谷剛彦、斎藤貴男での「不平等」問題についての座談会においての発言だが、佐藤は以下のような発言をしている。

佐藤
(・・・)
 ただ、正確なマーキング(識別)にこだわりすぎるのもあまりよくないと思います。特に機会の不平等みたいなものは、100パーセント識別するのは無理です。機会を直接測定するわけにはいきませんから。過大評価や過小評価は必ず起こります。
 そこまで正確性に捕らわれる必要はない。日本人は「貧乏なふりしてうまく金をもらっているいる人間は許せない」といった、変な平等主義に走るところがありますが、そんなにせこいことを言わなくてももういいんじゃないか。ずるする人間がいてもいいから、本当に機会の不平等に苦しんでいる人間に手を差しのべる、それで全体としてはむしろうまくいくのではないでしょうか。
 奨学金にしろセーフティネットにしても、ごまかして金をもらう人は必ず出てきます。でも、そういう人をはじくために、本当に困っている人に奨学金や生活保護が出ないようにするべきではない。機会の不平等はそもそも識別しにくいのだから、当然、失敗は起きます。でも、それを恐れて、本当に是正すべき状況を見すごす理由はどこにもないと思います。(・・・)

「封印される不平等」P91より


上記の引用文と同じになるが、「変な平等主義」、demianさんの言葉を借りれば「不幸の平等主義」はやめろと。
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by coma79 | 2006-01-15 17:04

ニート支援産業

ニート支援産業

斉藤環の『「負けた」教の信者たち - ニート・ひきこもり社会論 』を読み返していて、気になる点があった。
斉藤と玄田有史の対談の部分のなかで(p231以下)、以下のようなやりとりがある。

斉藤「(ニート対策は:筆者注)最低二年か三年はかけないと結果は出ない。一度就労させたとしても、また辞めてしまう可能性もあるから、フォローアップも必要です。最初の段階でそのあたりにクギをさしておかないと、先細りになってしまうのではないかという懸念があります。

玄田「そうですね。数を目標にするのはかえって危険性がある。じゃあ何を目標にするかといえば難しいですが、極端な話、もし国家予算を使うのであれば、『産業の育成』という名目でもいいのではないか。実際、『ニート支援産業』は将来的にビジネスとして成り立つと思うんです。元ニートがニートを支援するということができたら、いちばんいい。元ニートはニートを支援できるし、寝たきりの高齢者の支援もできる。最初は国家がお金を出すけれど、最後には放っておいても自分たちで何とかできるようになるのが理想かな」

(P246~P247)



具体的な数値目標を挙げるのが危険というのは異論はない、しかし、「ニート支援」をビジネス化するのは、また危険がある。ビジネスとなれば当然、利益を出す必要となる。その顧客となるニート(とその家族)が多くいれば、それだけ利益が上がる。しかしながら、他方でニートを減らすことをその目標をする以上、相容れない目標を抱えることになる。ここで、ニートが減少し始めた時に、それはいいことだとして潔く「店をたたむ」ことができればいい。だが、それでは困るとなって、新たな「ニート」の掘り起こしに向かう可能性もある。また、より多くの利益を求めるためニートもしくはその予備軍を必要とする所も出てくるであろう。



そうなるとどういうことが起きるか。少しでも、働いていない人を「ニート」とか言い出すかもしれない。「あなたもこのままだとニートから抜け出せないことになる。だから、私たちの所に来なさい」と人々の不安を煽って、自分たちの所に来るように仕向けるようにする。こうした不安を煽るやり方は、子どもを持つ親にすでに仕向けられている。たとえば、過去にgendai.netに以下のような記事が掲載された。



ニートになる度”チェックリスト

「良い子ほど危険」と専門家

 学校に行かず、働きもしない無業者「ニート」が増え続けている。内閣府の調べによると、その数は全国で85万人。近年はニートによる“家族殺し”事件まで頻発しているから事態は深刻だ。
「自分の子供はカンケーない」と思っているお父さんは要注意。就職支援会社「ワンバイワン」(東京)社長の鈴木明氏は、「子供がニートになるのは親の無知・無責任が最大の原因。『うちの子は良い子』と思い込んでいる親ほど子供をニートにしてしまう危険性が高いのです」という。
 今回、鈴木氏の経験から、将来ニートになりやすい中高生の“危ない素行”をチェックリストにしてもらった。この機会にわが子の「ニート度」を知っておこう。
 鈴木氏によると、「忍耐力、緊張感のない子はダメ。携帯電話は出会い系サイトやコミュニケーションへの影響から持たせない方がいい」という。ちなみに転校の多い子は、「最近は少人数クラス制なので、友達グループの数が減って輪に入りにくい」とか。
 あなたの子供は大丈夫?

“ニートになる度”チェック
〈該当する項目の□全てにチェック印を付けよ〉
□携帯電話を持っている
□1日1時間も机に向かわない
□家で学校の話をほとんどしない
□3年以上続いている趣味がない
□テレビゲームを長時間することが多い
□嫌なことがあるとその場を放棄しやすい
□おもちゃを次々と買い替える
□ホメられることも叱られることも少ない
□親の仕事の都合で転校が多い
□自分で食器を片付けない
□自室にパソコンがある
□小遣いの額が決まっていない
□日常生活での基本的な挨拶ができない
□家族の団らんが少ない
□ブランド物が大好き
□親に対して友達感覚で付き合う
□反抗期がない、良い子
□1人で遊ぶことが多い
□テレビを見ながら宿題をしている
□異性とのコミュニケーションが苦手

〈あなたの子供がニートになる度〉
16~20個……80%以上の確率でニートになる
11~15個……60%以上の確率でニートになる
6~10個……40%以上の確率でニートになる
5個以下……ニートになる可能性は低い


ニートの子どもを持つ親はいつ殺されかもしれないという不安を煽ったうえ、就職支援会社の人間がどこの家庭の子どもをニートになるかもしれないとさらに不安を煽る。そこに信憑性があるのかどうかわからないチェックリストまでご丁寧にサービスする。不安になった親はこうした会社に「自分の子どもがニートにならないためにはどうしたらいいのでしょう」と暖簾をくぐる。そうして会社は儲ける。こうしたもののほかに、「あなたの子どもがニートにならないために~するといいですよ」といった類の広告も見うけられる。

このようなことを放置すると、ニートとされる人たちや子どもをもつ親が金儲けの道具にされるし、また、親が不必要に不安・神経過敏になり、それが子育てに影響に親子関係が返って悪くなるかもしれない。このように考えるとニート支援のビジネス化には慎重であるべきである。
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by coma79 | 2006-01-11 21:01

教育学者の愚

教育学者の愚

日刊!ニュースな本棚 愛と学問の旅立ち 第24回 メディアと実態の深い溝――広田照幸インタビュー其の二 より


広田
 本当はいろんな形で世間に発信している教育学者たちが、もっと慎重に、現実を踏まえた研究なり考察をしていけばいいんだけどね。僕がやっている教育社会学の場合は、実態のデータを見直して世間に反省をうながすことはできるんだけれども、多くの教育学者はそのノウハウもないし、センスもなかったりするので、世間に流布している思い込みをただ増幅させてしまうんです。つまり、研究の世界と一般の人たちとの世界とを媒介する者が、ステレオタイプを強化してしまうことに、根の深さはあるような気がします。まずできることといえば、媒介者がもう少し現実をリアルに見つめてくれることだと思うんですよね。




悪い例


2005.05.20 産経
■《正論》「ゆとり教育批判」にもゆとりを
学力低下より深刻な人間力低下( 森隆夫 お茶の水女子大学名誉教授)より
 
確かに学力低下は国力低下に連なるが、学力を知育に矮小(わいしょう)化して考えるべきではない。それは人間力の低下と考え、総合的にとらえるべきである。つまり、人間力とは、知徳体の総合力であって、知力に限定すべきではない。

 人間力が低下していることは、働かず学校にも行かない「ニート」の増加にも端的に表れているが、それは無気力者の増加でもある。

 それなのに、学者はニートと片仮名で表現し、新しい学術用語のように使う。それは学者好みかもしれないが、広く国民にその真意を徹底し、ショックを与えない。これを無職、無業者、学習意欲のない者として、ズバリ「無気力者」というべきだと思う。これでは元気のない国民が増えるだけである。

 加えて、少子化ときている。学力低下に無気力者の増加、この三者から、この国の姿が見えてくる。要するに、今日、わが国は少子化(量)とともに劣子化(質)の危機に直面しているわけで、これにどう対処するかが、教育改革の課題でなければならないのである。





2004年11月20日付  読売新聞 「[土曜茶論]奉仕活動の必修化 どう思う 」より

本来自発的に取り組むべき活動を、本人の意思とは無関係に行わせるのは本末転倒ではないか――この1点にほぼ集約された反対意見に真っ向から異論を唱えるのは、お茶の水女子大学名誉教授の森隆夫さん(73)だ。

 森さんには、電車やバスで高校生から席を譲られた経験が1度もない。「精神的にも自立していない子どもたちに自発性が芽生えるのを待つという発想自体に、そもそも無理があるのではないでしょうか」

 森さんは言う。「自己中心的になりがちな今の子どもたちには、社会貢献のできる人間になるよう教え込む必要があると思います」

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by coma79 | 2006-01-11 20:46

「ニート・フリーター予防教育」のいかがわしさ

「ニート・フリーター予防教育」のいかがわしさ

ニート・フリーターの増加が言われるなかで、ニート・フリーターにならないための教育がはやっている。
そのような教育を紹介している記事等を見る中で疑問に思うものがある。読売の記事で気になったものがあった。それを引用してみよう。


2005. 10. 03  読売
「フリーター、ニートは損」 増加防止へ専門学校職員が出前授業

 ◇教育ルネサンス 
 ◆「社員と生涯賃金の格差2億」 わかりやすく解説 
 働かず、教育や職業訓練も受けていないニートや、定職に就かないフリーターの増加に歯止めをかけようと、船橋情報ビジネス専門学校(千葉県船橋市)の職員、鳥居徹也さん(39)が、全国の中学・高校で出張授業を展開している。生涯賃金や医療費など、具体的なデータを挙げて、「フリーターやニートは損」と訴える語り口が「分かりやすい」と好評で、今年度からは、文部科学省の委託事業にも採択された。(飯田祐子)
 先月下旬、長野県高遠町立高遠中で、3年生約70人が授業を受けた。鳥居さんは、クイズ形式で正社員とフリーターの格差を解説。生涯賃金の差を当てる三択問題では、多くの生徒が「200万円」か「2000万円」に手を挙げたが、鳥居さんが「正解は2億円」と告げると、どよめきが起きた。
 さらに、健康保険に加入していないフリーターは、風邪をひいただけで医療費がかさむことを「ゴホンと言えば諭吉が飛ぶ」と、明快なフレーズで表現。ボーナスや退職金など、月給以外にも大きな差があることを示した。
 厳しい現実をあけすけに話す一方で、努力次第で希望が広がることも強調する。勉強や練習を続ければ、いずれ急成長する時期がくることを、脳科学の知識を使って説明し、「大きく成功した人は、みな失敗を重ねてきた」と語りかけた。
授業を受けた同校の北原ゆりかさん(15)は、「やりがいがあればフリーターでもいいと思っていたけれど、絶対に嫌という気持ちになりました」と、すっかりイメージが変わった様子。垣内秀明教諭(40)は、「生徒たちが、いずれ必ず直面する問題なので、今のうちに考えておいてほしかった。この授業を今後の進路指導に生かしたい」と話していた。
 専門学校で広報を担当する鳥居さんは以前から、「働くことの意義を伝えたい」と地元周辺の高校で、キャリア教育の授業を行っていた。今年4月、フリーター、ニートを取り巻く現実や就職先、進学先の選び方などを分かりやすくまとめた小冊子を作成。無料で配布したところ、全国の高校などから注文が殺到し、発行部数は4万5000部に達した。6月には、小冊子の内容に加筆した「フリーター・ニートになる前に読む本」(三笠書房)も出版した。(以下略)


・その本

鳥居 徹也
フリーター・ニートになる前に読む本
本当なら上記の本を読んでから、エントリーを書くべきだろうが、手元にないので代わりに、この委託事業を紹介したページを参考にした。(平成17年度 文部科学省委託事業 『フリーター・ニートになる前に受けたい授業』 「全国授業キャラバン」


 最初に言ってしまえば、正社員になれないのは雇用状況の厳しさが大きな要因であるにもかかわらず、個人の努力を強調しすぎていることだ。それと脅迫的な指導のやり方である。

就職をイス取りゲームに例えるなら、参加者がうまくイスを取ることができないことよりも、参加者に対してイスの数が足りないことのほうが問題である。いかにいいイスを取るためのアドバイス自体は否定しないが、イスに座ることができない者はどうすべきかという問題意識が欠けている。正社員と非正規社員の間で一定程度賃金の格差が認められるとしても、今の格差は合理的な範囲か?、フリーターならば社会保障のサービスを受けられないのは当然のことなのかといった問題意識を持つことを妨げるような教育である*1。

 

 このような「働くことはすばらしい!」プラス「フリーターは地獄だ!」といった教育ばかりしていると、正社員として働きたいがために、どんなに不当な扱いを受けても会社にしがみ付く人間を生み出す可能性もある。会社から捨てられないようにするために、体に無理のあるような長時間を受け入れ、心身を害し、最悪、死に至ることもある(過労死・または過労が元になった自殺)。職場でパワー・ハラスメントの被害を受けたとしても、退職することもできず、泣きながら職場に行くしかない。

 また、運よく正社員として働けた者が、なかなか正社員として仕事につけない者の対して「傲慢」になるかもしれない。言うならば、「お前が正社員になれないのは、お前の努力が足りないからだ!だから、お前が十分な社会保障・福祉を受けられなくても、すべて自業自得だ!」と。



 内藤朝雄は以下のようにいう。『われわれは長らく、正社員として人格をあけわたして「社畜」状態で安定するか、「フリーター」として貧困で不安定な生活をするかという二者択一を強いられてきた』(論文未入手のため、内藤氏のプログ より引用)。まさにこのような教育というかそれ以上に強化するものである。

 内藤は先の文に続けて『ニート現象を心がけや生活態度の問題としてではなく、労働分配問題としてとらえ直せば、日本社会の働き方を根本から問い直すチャンスになるだろう』と述べているが、ニート・フリーターの問題を「個人の意識」の問題として青少年を「教育(脅迫)」することを推進するのは、(あえて、陰謀論的な言い方をすれば)日本的働き方によって利益を得ている人たちがその利益を失わないように、「日本社会の働き方を根本から問い直」されるのを防ぐための政策かもしれない。
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by coma79 | 2006-01-10 20:44

「ニート」は「若者自立塾」にいくべきなのか(1)(改編)

ニート対策として若者自立塾ができ、各地で活動が始められている。

若者自立塾支援センターのHP によると、若者自立塾とは「相当期間、教育訓練も受けず、就労することもできない若年者に対し、合宿形式による集団生活の中での生活訓練、労働体験等を通じて、社会人、職業人として必要な基本的能力の獲得、勤労観の醸成を図るとともに、働くことについての自信と意欲を付与することにより、就労等へ導くことを目的とした厚生労働省委託実施事業です」と説明されている。

ニート対策の切り札的に若者自立塾が位置づけられているが、では、ニートとされた人を塾に送ればそれでよいのだろうか。

そう思わせる記事があった。

第21回「ニート対策・若者自立塾」<1> 教育研究所所長・牟田武生 (毎日web版)

記事は、牟田氏が主宰する自立塾の紹介である。

気になる部分を引用する。

私が主宰するNPOも富山県宇奈月温泉で活動が始まった。不登校からひきこもりそのままニートになった人、高校を卒業した後、工場で働いたが機械化によって、人手が要らなくなって解雇された人、長時間の肉体労働を強いられ心の健康を害した人など、個々の事情は様々である。


 “なまけ”ではなく、様々な社会的な事情から排除された人や人間関係で傷ついて身動き出来なくなった若者が多い。精神的にも肉体的にも癒されながら、自分の将来に対してポジティブに考え、行動できる社会人としての基礎的な土台つくりの訓練が必要だ
 
 その為に、癒し、人間関係のスキル、生きる楽しみ、他人と共に汗を流し働く喜び、モチベーションを高く持ち「社会に貢献できる一流の人間になる」ことを目標にしている。また、地域のゴミ拾いや雪かきなどの奉仕活動を通じ、地域への貢献をする


疑問に思うのは、人員整理で解雇された人や無理な労働で心身を害した人も自立塾で「訓練」を受けていることだ。

彼らがどういう経緯で入塾を決めたのかはわからない。しかし、単純に考えれば、本人の問題でなく、雇用・労働環境の問題ではないのか。「精神的・肉体的癒し」が必要としても「社会人としての基礎的な土台つくりの訓練」が必要とは思わない。次の良質な雇用先を見つけることができるのかという方が問題であるはずだ。良い職場に就くことができず、また簡単に人を切るような所や労働者を酷使する所にしか就くことしかできなければ根本的な問題解決できない。

「“なまけ”ではなく、様々な社会的な事情から排除された人や人間関係で傷ついて身動き出来なくなった若者」に対して「『社会に貢献できる一流の人間になる』ことを目標」とした「訓練」をするというが、これほど馬鹿げた主張はない。これでは、「排除されたくなければ、社会に貢献できる人間になれ」、逆に言えば、「社会に貢献できないのなら、排除されてあたりまえだ」という理屈が成り立つ。

最近の風潮として、社会全体の問題として解決されるべきものが個人レベルの問題としてすり替えられるが、それがここにも現れている。

雇用・労働環境の劣悪化のあおりを受けたような人たちを「ニート(意欲に問題のある人)」と言うのなら、それならば、劣悪な環境を改善するの方が優先されよう。「様々な社会的な事情から排除された人」を「訓練(特に内面)」の対象にするべきでない。

牟田氏による、「ニート対策・若者自立塾」の連載を読むと疑問に思うところが出てくるのだが、それはまた次にしたい。
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by coma79 | 2006-01-09 20:46

このプログについて

以前、アメーバに書いてきた分から、まともに書いた記事だけこちらに移しました。近いうちにアメーバのプログは破棄します。その際、少し改編したものもあります。アメーバには、はてなに移ると書きましたが、あちらはメモ書きの代わりや極めて私的なこと、鬱憤ばらしに書いたものなど、ロクなものではないので、まじめな記事はこちらに書きます。使ってわかったのですが、アメーバのブログは個人的に使いにくく、エキサイトの方が合います。アメーバの時からみてくださった方々には、筆者のグダグダぶりを露呈してしまってもうしわけないです。
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by coma79 | 2006-01-07 22:13 | このプログについて



「要するにそういうこと(死球)があれば、命をかけてマウンドに走り、そいつを倒したい」by清原
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