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ANOTHER BRICK IN THE WALL

「ニート・フリーター予防教育」のいかがわしさ

「ニート・フリーター予防教育」のいかがわしさ

ニート・フリーターの増加が言われるなかで、ニート・フリーターにならないための教育がはやっている。
そのような教育を紹介している記事等を見る中で疑問に思うものがある。読売の記事で気になったものがあった。それを引用してみよう。


2005. 10. 03  読売
「フリーター、ニートは損」 増加防止へ専門学校職員が出前授業

 ◇教育ルネサンス 
 ◆「社員と生涯賃金の格差2億」 わかりやすく解説 
 働かず、教育や職業訓練も受けていないニートや、定職に就かないフリーターの増加に歯止めをかけようと、船橋情報ビジネス専門学校(千葉県船橋市)の職員、鳥居徹也さん(39)が、全国の中学・高校で出張授業を展開している。生涯賃金や医療費など、具体的なデータを挙げて、「フリーターやニートは損」と訴える語り口が「分かりやすい」と好評で、今年度からは、文部科学省の委託事業にも採択された。(飯田祐子)
 先月下旬、長野県高遠町立高遠中で、3年生約70人が授業を受けた。鳥居さんは、クイズ形式で正社員とフリーターの格差を解説。生涯賃金の差を当てる三択問題では、多くの生徒が「200万円」か「2000万円」に手を挙げたが、鳥居さんが「正解は2億円」と告げると、どよめきが起きた。
 さらに、健康保険に加入していないフリーターは、風邪をひいただけで医療費がかさむことを「ゴホンと言えば諭吉が飛ぶ」と、明快なフレーズで表現。ボーナスや退職金など、月給以外にも大きな差があることを示した。
 厳しい現実をあけすけに話す一方で、努力次第で希望が広がることも強調する。勉強や練習を続ければ、いずれ急成長する時期がくることを、脳科学の知識を使って説明し、「大きく成功した人は、みな失敗を重ねてきた」と語りかけた。
授業を受けた同校の北原ゆりかさん(15)は、「やりがいがあればフリーターでもいいと思っていたけれど、絶対に嫌という気持ちになりました」と、すっかりイメージが変わった様子。垣内秀明教諭(40)は、「生徒たちが、いずれ必ず直面する問題なので、今のうちに考えておいてほしかった。この授業を今後の進路指導に生かしたい」と話していた。
 専門学校で広報を担当する鳥居さんは以前から、「働くことの意義を伝えたい」と地元周辺の高校で、キャリア教育の授業を行っていた。今年4月、フリーター、ニートを取り巻く現実や就職先、進学先の選び方などを分かりやすくまとめた小冊子を作成。無料で配布したところ、全国の高校などから注文が殺到し、発行部数は4万5000部に達した。6月には、小冊子の内容に加筆した「フリーター・ニートになる前に読む本」(三笠書房)も出版した。(以下略)


・その本

鳥居 徹也
フリーター・ニートになる前に読む本
本当なら上記の本を読んでから、エントリーを書くべきだろうが、手元にないので代わりに、この委託事業を紹介したページを参考にした。(平成17年度 文部科学省委託事業 『フリーター・ニートになる前に受けたい授業』 「全国授業キャラバン」


 最初に言ってしまえば、正社員になれないのは雇用状況の厳しさが大きな要因であるにもかかわらず、個人の努力を強調しすぎていることだ。それと脅迫的な指導のやり方である。

就職をイス取りゲームに例えるなら、参加者がうまくイスを取ることができないことよりも、参加者に対してイスの数が足りないことのほうが問題である。いかにいいイスを取るためのアドバイス自体は否定しないが、イスに座ることができない者はどうすべきかという問題意識が欠けている。正社員と非正規社員の間で一定程度賃金の格差が認められるとしても、今の格差は合理的な範囲か?、フリーターならば社会保障のサービスを受けられないのは当然のことなのかといった問題意識を持つことを妨げるような教育である*1。

 

 このような「働くことはすばらしい!」プラス「フリーターは地獄だ!」といった教育ばかりしていると、正社員として働きたいがために、どんなに不当な扱いを受けても会社にしがみ付く人間を生み出す可能性もある。会社から捨てられないようにするために、体に無理のあるような長時間を受け入れ、心身を害し、最悪、死に至ることもある(過労死・または過労が元になった自殺)。職場でパワー・ハラスメントの被害を受けたとしても、退職することもできず、泣きながら職場に行くしかない。

 また、運よく正社員として働けた者が、なかなか正社員として仕事につけない者の対して「傲慢」になるかもしれない。言うならば、「お前が正社員になれないのは、お前の努力が足りないからだ!だから、お前が十分な社会保障・福祉を受けられなくても、すべて自業自得だ!」と。



 内藤朝雄は以下のようにいう。『われわれは長らく、正社員として人格をあけわたして「社畜」状態で安定するか、「フリーター」として貧困で不安定な生活をするかという二者択一を強いられてきた』(論文未入手のため、内藤氏のプログ より引用)。まさにこのような教育というかそれ以上に強化するものである。

 内藤は先の文に続けて『ニート現象を心がけや生活態度の問題としてではなく、労働分配問題としてとらえ直せば、日本社会の働き方を根本から問い直すチャンスになるだろう』と述べているが、ニート・フリーターの問題を「個人の意識」の問題として青少年を「教育(脅迫)」することを推進するのは、(あえて、陰謀論的な言い方をすれば)日本的働き方によって利益を得ている人たちがその利益を失わないように、「日本社会の働き方を根本から問い直」されるのを防ぐための政策かもしれない。
by coma79 | 2006-01-10 20:44
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